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マイルで100の世界遺産!旅行記

毎年30万ANAマイルを貯めて、100カ所以上の世界遺産を訪れたトートの旅行情報ブログ

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スペイン旅行記番外編 スペインが舞台のおすすめ本

旅行の行き先が決まると、なるべくその土地を取り上げた本を読むようにしています。もともと歴史が好きなのですが、旅する土地の逸話や風俗、伝説などを知っていると、多いに旅行が彩りを増すように思います。とくにお気に入りの本に出会えた場合には、その舞台を訪れるいわゆる「聖地巡礼」を楽しむことができます。

 

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今回のスペイン旅行にあたって読んだのは、こちらの4冊。

 

スペイン旅行に最適の一冊 岩根圀和『物語 スペインの歴史』 

物語 スペインの歴史―海洋帝国の黄金時代 (中公新書)

物語 スペインの歴史―海洋帝国の黄金時代 (中公新書)

 

 

 

中央公論社の「物語で読む」シリーズは手軽に一国の歴史を知ることができるので、愛読しています。その中でもこのスペイン版は、ひときわ読みやすく、なかば小説のような物語性で楽しくページをめくりました。著者が歴史研究家というより、スペイン文学、とくに「ドン・キホーテ」のセルバンテス研究を専門としている、どちらかといえば文学畑の人であることがその大きな理由かと思います。

 

その著者がとくに気に入っているスペイン史上のエピソードや事件を並べている作品なので面白くないわけがなく、読みごたえがあります。その分、イスラム勢力のイベリア半島上陸前と、スペイン・ハプスブルク家没落後に関しては、あまりページをさいてはいません。逆に言えばスペインがもっとも輝いていた黄金期を中心にすえているので、その遺産を目当てに訪れる旅行者にとっては格好の読み物です。

 

主な内容はイスラムの上陸からレコンキスタの完成、大航海時代、レパントの海戦、無敵艦隊の敗北など。セビリア、グラナダ、コルドバ、トレド、マドリードが頻出するので、とくにアンダルシア地方をめぐる際にはまずはこちらをおすすめしたいです。アフリカで虜囚の身となったセルバンテスの脱走劇などはエンタテイニングだし、スペイン異端審問の拷問のくだりなど、顔をしかめつつもつい読み進めてしまうこと、うけあいです。

 

アルハンブラ宮殿観光を盛り上げる幻想小説 ワシントン・アーヴィング『アルハンブラ物語』

アルハンブラ物語〈上〉 (岩波文庫)

アルハンブラ物語〈上〉 (岩波文庫)

 

 

アルハンブラ宮殿といえばスペイン旅行のハイライトのひとつですよね。グラナダの街から宮殿へむかう坂道の途中に、書物を片手に持った男性の彫刻があります。それがこの本の作者、ワシントン・アーヴィングです。

 

アーヴィングは19世紀にスペインやイギリスに滞在していたアメリカ人外交官です。そんな彼がセビリアからグラナダへと旅に出るところから物語は始まります。紀行文ですね。私もちょうど同じルートをたどったので、追体験するという意味でも面白かったです。およそ150年前にアンダルシア地方を横断するのは野盗をはじめさまざまな危険に満ちて、なかなかに大変なことだったようで、AVAで楽して申しわけない気持ちにもなります(笑)。

 

ただ、この本の一番の読みどころはグラナダについてからの話になります。驚くべきことに、当時は打ちすてられて浮浪者や不届きな輩が勝手に住みついている廃墟同然の状態だったそうです。

 

そんな中、宮殿の一室に滞在してアルハンブラにまつわる、あるいは血に塗られた、あるいはロマンスに満ちた、あるいは歴史の闇にほうむられた様々な伝承をアーヴィングは書き記しています。あの広大な宮殿を言わば独り占めしたのはどんな気分なんでしょうね……。幻想味たっぷりの本書を読んでからアルハンブラを訪れると、にぎやかで観光客がそぞろ歩く今の宮殿とは違う、本当のアルハンブラを知ることができるような気分になります。ぜひ読んでみてください。ナスル宮には、アーヴィングが本書を執筆した部屋も残っています。

 

プラド美術館のお手軽指南書 中野京子『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)

 

 

あくまでも「ハプスブルク」にまつわる本であって、とくにスペインと銘打ってはいないのですが、前書きにもある通り、こと絵画においては本家よりもスペイン・ハプスブルクの方が質量ともに圧倒するコレクションを持っており、必然的にその殿堂ともいえるプラド美術館の作品が多く取り上げられています。

 

『ラス・メニーナス』をはじめとして、プラド美術館のハイライト作品の解説がコンパクトにぎゅっとまとまっています。『狂女王フアナ』など、背景を知っているの知らないのでは鑑賞する意味合いや面白さが大違いであろうと思います。その意味で、どちらかといえば純粋な美術的見方よりも名画に込められた意味や背景を解説してくれる本書は、プラド訪問をより充実させてくれる格好の入門・指南書になっていると思います。もちろんプラド以外の作品も収録されていますが、そもそもハプスブルク家抜きにはスペイン史は語れませんし、同じように興味深いですよ。厚さもそんなになくサラサラっと読めるので、マドリードではプラド美術館くらい寄ってみようかな?という人にもおすすめです。

 

カルロス・ルイサフォン『風の影』

風の影〈上〉 (集英社文庫)

風の影〈上〉 (集英社文庫)

 

 

一言で言えば、「魔法的」という言葉がとても似合う小説です。「魔法的」という修飾語は、マルケスなど中南米文学だけに属するもので、同じスペイン語で書かれたからといって習慣的につけるべきではないという意見もあるかもしれませんが、サフォンの文章に「魔法的」ほどぴったり合う言葉はなかなかないと思いました

 

話は、ダニエルという少年が「忘れられた本の墓場」という図書館で無名の作家が書いた小説『風の影』を手に入れることから始まります。美しい港町バルセロナを舞台にダニエルは様々な人に出会い、危険に出くわしたり、様々な冒険をします。

 

その過程を書いた文章がとても美しくもあり、同時に哀しくもあって、いつの間にかバルセロナとそこに住んでいる登場人物たちに恋してしまうほどです。バルセロナに行ったことのある人なら、小説を読んで容易にランブラス通りやレイアール広場を歩く主人公たちを目に浮かべることができると思います。

バルセロナに行ったことがない人なら、小説に登場した場所に足を運び、過去の栄光と内戦の傷を同時に持つバルセロナの歴史とその美しさを、自分の目で直接確かめたくなるでしょう

 

「旅行」の意義に、その土地とそこに住む人たちを理解し、愛情を持つことが含まれているとするならば、バルセロナを訪れる方々にはぜひオススメしたい小説です。

 

ガウディの伝言 (光文社新書)

ガウディの伝言 (光文社新書)

 

 

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